このところ、欧州司法裁判所では、公衆伝達に関する裁判例が相次いでいます。
今般、新たに、プラットフォームの管理と提供が情報社会指令の公衆伝達に該当するかという問題に関して、欧州司法裁判所の判決がでました(欧州司法裁判所2017年6月14日判決Ziggo BV事件)。
なお、このコラムでは、公衆伝達に関する以下の判決を紹介しています。
欧州司法裁判所2016年9月8日判決GS Media事件
欧州司法裁判所2017年4月26日判決filmspeler事件①
欧州司法裁判所2017年4月26日判決filmspeler事件②
GS Media事件では、違法コンテンツにリンクを張る行為が問題となり、filmspeler事件では、違法コンテンツへのリンクを内蔵する再生機器を販売する行為が問題となっています。
本件のZiggo BV事件では、ファイル交換できるシェエアリングプラットフォームの提供および管理が、公衆伝達に含まれるかどうかが問題となりました。
【事案の概要】
被告Ziggo BVらは、インターネットアクセスプロバイダであり、その登録ユーザの多くが、The Pirate Bay(TPB)というオンラインのシェアリングプラットフォームを使用していました。TPBは、BitTorrent(Peerと呼ばれるユーザがファイルをシェアできるプロトコル)ファイルのインデクサ(タグをつけるプログラム)です。ユーザは、トレントファイルを作成するBitTorrentクライアントソフトをダウンロードする必要があります。
ただし、このソフトは、TPB上では提供されていませんでした。
Seederと言われるユーザは、Leecherと呼ばれる他のユーザに、そのコンピュータ上にあるファイルを利用させられるよう、ビットトレントクライアントソフトを通してトレントファイルを作成しなければなりません。トレントファイルは、トレントファイルをシェアできるユーザを識別する中央サーバーを参照します。これらトレントファイルは、Seederによって、TPBのようなオンラインシェアリングプラットフォームでタグづけされ、ユーザのPCにダウンロードできます。
TPBプラットフォーム上で提供されたトレントファイルの主なものは、著作権者がファイル共有について、プラットフォームの管理者が使用者に許諾を与えていない著作権で保護される著作物です。
オランダの著作権者保護団体であるStichting Brein (原告)は、被告らに対し、インターネットアクセスプロバイダのサービスが著作権侵害に使用されないよう、オンラインシェアリングプラットフォームのドメインネームとIPアドレスのブロックを命じることを求めて、提訴しました。オランダでは、第1審では請求が認容され、控訴審では認容されませんでした。オランダ最高裁は、ヨーロッパ司法裁判所に先決問題を付託しました。
【先決問題】
付託された先決問題は、以下のとおりです。
1 保護される著作物がそのサイト上に利用可能とされないが、ユーザのPC上にある保護される著作物のメタデータが、ユーザのためにタグ付けされて分類され、その結果、ユーザが保護される著作物をたどって、アップロードやダウンロードできる場合に、ウェブサイトの管理者による情報社会指令3条1項の公衆伝達といえるか。
2 第1の問題が否定される場合、情報社会指令8条3項、指令2004/48の11条は、この仲介者が第1の問題にいう方法で、第三者によって行われた侵害行為を助長するときに、これらの条項にいう仲介者に対して差止めを認めるか。
このコラムは、以下に続きます。
プラットフォームの提供に関する欧州司法裁判所判決➁ (判決)
プラットフォームの提供に関する欧州司法裁判所判決➂ (判決理由の要旨)