公衆伝達に関する欧州司法裁判所判決filmspeler事件➀
欧州司法裁判所の裁判例では、リンクを張る行為も、場合によっては、公衆伝達権の侵害に該当します。
リーチサイト問題に参考になる欧州司法裁判所判決参照
公衆伝達権は、欧州の情報社会指令3条1項に定められています。
情報社会指令は、欧州連合構成国の著作権法のハーモナイゼーションを目的としていますが、3条1項に定められている「公衆伝達」の概念は、明確とはいえません。
そこで、欧州では、この公衆伝達の解釈を巡って問題となり、さまざまな判決が下されています。
欧州司法裁判所2017年4月26日判決filmspeler事件は、公衆伝達の解釈が問題となったケースです。
事案の概要
被告である個人は、自己のサイトや他のサイトで、マルチメディア再生機器filmspelerを販売していました。
その再生機器には、著作権者の許諾なくインターネットユーザーの利用に供された著作物があるウェブサイトに誘導するモジュールが入っていました。
このモジュールは、第三者が作成したインターネットで入手できるもので、サイトに誘導するリンクを含み、そのリンク先のサイトでは、コンテンツをストリーミング再生できるのですが、コンテンツには、許諾を得たものと無許諾のものがありました。
被告は、その再生機器の広告で、著作権者の許諾なくインターネット上に提供されている映像も、テレビ画面で簡単に無償で閲覧できることを謳っていました。
オランダにおける著作権者保護団体であるStichting Brein (原告)は、被告が機器を販売することによって公衆伝達権を侵害したと主張し、被告を訴えたのですが、被告は、侵害コンテンツのストリーミング配信は著作権の例外に該当すると主張しました。
そこで、オランダの裁判所は、欧州司法裁判所に先決問題を付託しました。
争点(提起された先決問題)
1: 情報社会指令3条1項は、次の意味に解釈されるか。つまり、ある者が、著作権者の許諾なく、映画などの著作権により保護された著作物に直接アクセスできるウェブサイトに誘導するリンクを含むモジュールをインストールした再生機器を販売する場合、この規定にいう公衆伝達があるといえるか。
2:次の場合、第1の問題に対する答えに影響するか。
-著作権によって保護された著作物が、登録ユーザにしか公開されていないか、著作権者の合意の上でインターネットで公開されたことがない場合
-違法コンテンツへ直接アクセスできるウェブサイトに導くモジュールが無償で利用できたり、ユーザ自身がこのモジュールを再生機器にインストールできる場合
-再生機器がなくても、公衆がサイトにアクセスでき、したがって、著作権者の同意なく著作物にアクセスできる場合
3:情報社会指令5条は、次の意味に解釈されるか。つまり、著作権者の合意なく提供されている著作権により保護される著作物が存在する第三者のウェブサイト上で、著作物がストリーミング再生され、著作物の一時的複製がエンド ユーザのもとで行われることは、同条1項b)の適法な利用に該当しないか。
4:3項の問題が否定される場合、エンドユーザが著作権者の許諾なく著作権により保護された著作物を提供する第三者のウェブサイト上で、ストリーミング再生によって著作物の一時的複製ができることは、情報社会指令5条5項のスリーステップテストに合致しないといえるか。
上記の先決問題に対する欧州司法裁判所の判決は、
公衆伝達の概念に関する欧州司法裁判所判決filmspeler事件➁