著作物を使う場合は、原則として許諾が必要
著作権法は、著作者が、著作者人格権と著作権を享有することを定めていますので(著作権法17条1項)、著作物を利用するためには、原則として、著作権者の許諾を得なければなりません。著作権保護期間が徒過した著作物や著作権法に定められた例外に該当する場合は、著作権者の許諾なく著作物を利用することができます。
そのため、権利者が不明の著作物であっても、著作権保護期間がまだ徒過していない著作物を、著作権法に定められた例外に該当しない態様で使用する場合は、著作権者の許諾を得る必要があるということになります。
著作権者が不明なときや連絡がとれないときの裁定制度
とはいえ、著作権者が不明の著作物について、どのように許諾をとればよいのかという疑問が生じます。
著作権法は、そのための規定を用意しています。権利者不明の著作物を利用するには、「裁定制度」を利用します(著作権法67条)。
裁定制度は、権利者が不明の著作物の利用を希望する者が、文化庁長官の裁定を受け、文化庁長官が定める補償金を供託して、著作物を利用する制度です。
この裁定制度を利用するためには、➀著作権者の不明その他の理由により、➁相当な努力を払っても、その著作権者と連絡することができないことが必要です。ここで、権利者が不明の場合というのは、権利者が分からない場合のほか、権利者が分かっても連絡をとることができない場合も含みます。
裁定制度を利用するための準備
裁定制度を利用するためには、相当な努力を払っても、その著作者と連絡することができないことを示す必要があります。
かつての裁定制度は、この段階で「相当な努力」以上の努力が求められ、あまり活用されていませんでした。現在は、柔軟に運用され、使い勝手が良い制度になり、活用が広がっています。
では、著作者と連絡することができないというのは、どのような状態をいうのでしょうか?
これは、著作権法施行令に定められています。
つまり、➀権利者と連絡を取るために必要な情報(権利者情報)を取得するための所定の措置をとり、かつ、②取得した権利者情報や保有していたすべての権利者情報に基づき、権利者と連絡するための措置をとったにもかかわらず、権利者と連絡することができなかった場合をいいます(施行令7条の7第1項)。
①にいう所定の措置とは、次のa)~c)の全ての措置をとることです(著作権法施行令7条1項)。
a)広く権利者情報を掲載していると認められるものとして文化庁長官が定める刊行物その他の資料を閲覧すること(同条項1号)
b)著作権等管理事業者その他の広く権利者情報を保有していると認められる者として文化庁長官が定める者に対し照会すること(同条項2号)
c)時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙への掲載その他これに準ずるものとして文化庁長官が定める方法により、公衆に対し広く権利者情報の提供を求めること(同条項3号)
というと、大変な感じがしますが、実際は、それほど面倒ではありません。具体的には、➀については、ウェブサイトで検索するなどの方法でよく、➁については、利用したい著作物の分野の著作権管理団体に問い合わせをするなどの方法で足り、③については、著作権情報センターのウェブサイトに7日間以上掲載してもらい、情報の提供を求めるなどの方法をとることになります。
権利者が不明だからといって利用を諦める必要はなく、ちゃんとした手続きを踏むことによって利用することができることに注意すべきです。また、逆に、勝手に使ってしまうと著作権侵害になる可能性があることにも注意すべきです。