インターネット上で商品を販売するサイトには、二つの形態があります。一つは、サイトを運営者が直接商品を販売する場合です。もう一つは、サイト運営者がショッピングモールを営み、そのショッピングモールのなかで出店者がそれぞれのサイトを開設し、そのページで出店者の商品を販売する場合です。後者の場合、ショッピングモール運営者は、出店者がその出店ページで行った商標権侵害について責任を負うのでしょうか?
実は、商標法は、このような場合について何も定めていません。
商標法37条2号から8号は、商標権侵害行為の予備的行為を商標権侵害とみなし、禁止する規定(みなし侵害規定)です。ところが、本規定には、上記のような場合についての定めがないのです。そのような定めがない場合でも、商標権侵害の責任が生じるのでしょうか。
裁判例(知財高裁平成24年2月14日判決)は、ショッピングモール運営者が、出店者の商標権侵害について責任を負う場合があることを認めています。
事案の概要
「Chupa Chups」(商標登録第4296505等)の商標権を管理するイタリア法人は、インターネットショッピングモール「楽天市場」において、同社に無断で、「Chupa Chups」のロゴが入った不真正商品が展示され、販売されていることを発見し、「楽天市場」を運営する楽天株式会社に対し、不正競争防止法違反または商標権侵害を理由として差止および損害賠償を求め提訴しました。
原判決(東京地裁平成22年8月31日判決判時2127号87頁)は、楽天は商品の販売主体ではないと判断し、原告の請求を棄却したのですが、これに対して、原告が控訴しました。
判決の概要
知財高裁は、次のように判断し、「楽天市場」のようなインターネットショッピングモールの運営者であっても、商標権の侵害主体となる可能性があることを認めました。
「ウェブページの運営者が、単に出店者によるウェブページの開設のための環境等を整備するにとどまらず、運営システムの提供・出店者からの出店申込みの許否・出店者へのサービスの一時停止や出店停止等の管理・支配を行い、出店者からの基本出店料やシステム利用料の受領等の利益を受けている者であって、その者が出店者による商標権侵害があることを知ったとき又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるに至ったときは、その後の合理的期間内に侵害内容のウェブページからの削除がなされない限り、上記期間経過後から商標権者はウェブページの運営者に対し、商標権侵害を理由に、出店者に対するのと同様の差止請求と損害賠償請求をすることができると解するのが相当である」
しかし、本件では、知財高裁は、ショッピングモール運営者である楽天の責任を認めませんでした。理由は、運営者が、商標権侵害の事実を知ったときから8日以内という合理的期間内に、これを是正したからです。
実務上の注意点
上記裁判例によれば、直接的に商標権を侵害していないショッピングモール運営者であっても、以下3点商標権侵害について出店者と同様の責任を負うことになります。
①出店者を管理支配し、
②出店者から利益をうけている場合で、
③出店者による商標権侵害を知ったときまたは知ることができたと認めるに足りる相当の理由があったときから合理的期間内に削除しない場合
合理的期間内というのが、どの程度の期間を指すのかは、裁判例からは必ずしも明らかではありません。しかし、ショッピングモール運営者は、商標権者から商標権侵害がされているとの警告書を受領した場合、直ちに調査し、商標権侵害がされていると分かったら、該当部分をすみやかに削除しなければ、商標権侵害の責任を問われる可能性がありますので、放置することのないよう注意が必要です。