出版業界でいう自炊(じすい)とは?

出版業界に関して自炊(じすい)とは、所有している雑誌や書籍を、スキャナ等を使用し、デジタルデータに変換する行為(デジタル化・電子化)を指す俗語になります。
もともとは、ファイル交換ソフト(P2Pソフトウェア)で不特定多数に配布目的で書籍を自身でスキャニングするというネットスラングで、書籍をスキャンして書籍を電子ファイル化する行為を意味し、外食をせず、自分で料理を作ることではありません、もちろん、著作権侵害となります。

自炊の方法

自炊のやり方として、主に、二つの方法があります。

一つは、自分で自炊する方法で、書籍を裁断・またはでスキャンをする為に、雑誌・書籍を裁断機で裁断・中には、お金をかけずにホットプレート、アイロン等で書籍のノリを熱で分離し、裁断することなくスキャンして、電子ファイル化する方法

もう一つは、第三者に業務委託して自炊する方法で、これは、自炊代行サービスを利用する場合です。
利用者が、書籍を自炊代行業者に郵送すると、自炊代行業者は、その書籍を裁断しまたは裁断しないでスキャンし、電子ファイル化して、ユーザーが電子ファイルをダウンロードする方法や電子ファイルを複製したCD-ROMなどの媒体をユーザーに送付する方法により電子ファイルを納品します。裁断後の書籍については、一律に廃棄する業者もありますが、ユーザーの希望により返却か廃棄かを選択できる業者もあります。
そのほか、裁断だけを行う業者も存在します。

 

自炊がどうして著作権法の問題となるか?

 

書籍やマンガなどの著作者は、自分の作品を複製する権利があります。
書籍を何らかの方法で電子ファイル化する行為は、複製行為なので、本来、権利を有する著作者の許諾を受ける必要があります。しかし、些細な複製にもいちいち著作者の許諾を受けることを法律で強制することは現実的ではありません。そこで、著作権法は、著作物を個人的にまたは家庭内など限られた範囲内で使用することを目的として、使用者が複製する行為を私的複製として、複製権の例外としています。
したがって、書籍を買った人が、自分で利用するために書籍をバラバラにしてスキャンし電子ファイル化するのであれば、著作権法の私的複製に該当します(著作権法30条1項)。

問題となるのは、自炊代行業者がユーザーに代わって電子ファイル化する行為です。これは、ユーザーが、自ら電子ファイル化して複製する行為の延長にも見えますし、ユーザーの行う電子ファイル化による複製行為とは切り離された行為にも見えます、そのため、自炊代行業者のもとで複製行為が行われたといえ、その複製行為に対し、著作権法の私的複製の例外規定の適用があるかどうかが問題となります。

また、社会的にも、自炊により電子ファイル化されることにより、書籍やマンガがインターネットのサイトにアップされ、第三者がこれらの電子ファイルをタダで入手できるようになるとすると、書籍やマンガの著作者らが創作した者の対価を受けられなくなるという問題が生じます。

これまでの裁判例による判断
書籍やマンガの作者らが自炊代行業者を訴えた裁判で、判決が下されたものは、これまで3件あり、いずれの判決も自炊代行業者の複製権侵害を肯定しています。