フランスにおける書籍電子化と集中管理はEU指令違反③

「フランスにおける書籍電子化と集中管理はEU指令違反①」、「フランスにおける書籍電子化と集中管理はEU指令違反②」の記事に掲載したとおり、欧州司法裁判所(2016年11月16日判決)は、フランスにおいて導入された、市場において入手不可能な書籍に関する集中管理団体による利用許諾制度が、情報社会指令に違反すると判断しました。

今回は、欧州司法裁判所判決後のフランスの対応についてです。

欧州司法裁判所は、著作権者は著作物の利用を許諾しまたは禁止する排他的権利を有するので、著作物の利用者は著作権者から事前の利用許諾を得る必要があり、著作権者の事前の同意なく著作物を利用する行為は著作権侵害になるとの前提にたち、著作権者に対する効果的かつ個別的な情報提供がないなか、単なる異議の不存在を黙示の同意の表明とみなすことはできないことを主な理由として、入手不可能な書籍の集中管理制度を、情報社会指令に違反すると判断しました。

これを受けて、フランスの国務院(2017年6月7日決定)は、は、知的財産法典規則の部134-5条ないし134-10条を無効としました。国務院は、データベースに登録されたのち6か月経過した入手不可能な書籍について、集中管理団体に複製権、上演・演奏権の利用許諾権を与える当該制度は、情報社会指令2条および3条違反とみなされると判断しました。その理由として、著作者に対し、データベース登録に関する個別的かつ効果的な情報提供がなされていないこと、同意の撤回権の行使を希望する著作者に対し、複製権の唯一の権利者であることを示すように課していることが挙げられています。

これに対し、規則のうち、フランス国立図書館が運用している入手不可能な書籍のデータベースの導入・運用に関する部分(規則の部134-1条ないし134-4条)は、法的根拠をはく奪されるものではないと判断されました。

その結果、入手不可能な書籍利用制度は、データベースの部分は維持されているのですが、著作者・出版者からの異議申し立てがない入手不可能な書籍の利用を出版者に許諾するという中核部分は、運用が停止されている状況です。

このような現状となっているのですが、デジタル単一市場指令は、入手不可能な書籍の利用促進を定めています。そのため、従来の制度が、今後、別の形で復活する可能性もあり得ます。