フランスでは、2014年11月12日オルドナンス2014-1348号により、出版契約に関する規定を電子書籍に対応させるための、知的財産法典の改正が行われました。
改正前の出版契約の定義
出版契約に関する規定は、暫く改正がない状態が続いていました。そのため、電子出版についても、改正までは解釈で対応していました。しかし、従来の出版契約は、知的財産法典132-1条で、「精神の著作物の著作者又はその権利承継人が、その著作物の発行及び頒布を出版者が確保することを条件としてその著作物の複製物を多数製造しまたは製造させる権利を、一定の条件に従って、出版者と呼ばれる者に譲渡する契約をいう」(著作権情報センターHPより引用)と定義されていたため、「複製物を多数製造しまたは製造させる」という部分が、電子出版にそぐわず、電子出版に関する出版契約は、従来の出版契約の解釈ではカバーしきれないという問題が生じていました。
改正後の出版契約の定義
改正後、出版契約は、「出版契約とは、精神の著作物の著作者又はその権利承継人が、その著作物の発行及び頒布を出版者が確保することを条件としてその著作物の複製物を多数製造し、もしくは製造させる権利またはデジタル形式でそれを実行しもしくは実行させる権利を、一定の条件に従って、出版者と呼ばれる者に譲渡する契約をいう」と定義されています(下線部は、改正部分)。
その他の改正点
定義規定が電子出版に対応して上記のように改正されたほか、以下のような規定が新設されています。
-印刷形式及びデジタル形式の書籍の出版に関する132-17-1条から132-17-4条、
-デジタル形式の書籍の出版にのみ適用される132-17-5条~132-17-7条、
-職業団体間の合意に関する132-18条
知的財産法典132-1条から132-17条は、出版契約の一般法となっていますが、これは、書籍以外に、著作物の複製物を多数製造したり製造させたりする場合にも適用されます。たとえば、CDの発行などです。
これに対し、新設された132-17-1条以下は、「書籍」の出版にのみ適用される規定です。また、新設された132-17-5条以下は、「デジタル形式での書籍」の出版にのみ関する規定です。これらの規定では、出版契約の一般法をベースとしながら、より詳細に、出版者と著作者の義務が定められています。特に、報酬に関しては、より詳細に定められています。
フランスの出版契約の特徴
フランスの出版契約では、著作者が出版者に権利を譲渡することとなっていますが、出版者が著作者に対して負担している義務を詳細に定め、著作者を害することのないように規制している点が特徴的といえます。他方、著作者も、出版者に対して、著作物を平穏に利用できるようにする義務を負っています。その意味で、私的自治を基礎としながら、当事者間の衡平が保てるよう工夫されたものといえます。