よくある法律相談-商品の形がそっくり真似された場合

商品の形が真似されているという場合、どのように対処したらよいのでしょうか。

意匠登録しているとき

商品の形状は、それを意匠登録していれば、意匠権が発生します。意匠登録していれば、商品の形状が真似された場合、意匠権侵害を主張することができます。ところが、個々の商品の形状について意匠登録をしているケースは少なく、意匠登録しないまま発売し、後々になってヒット商品となる、というのはよくある話しです。

意匠登録していないとき

意匠登録していないと、真似されたときに泣き寝入りしなければならないのでしょうか。不正競争防止法は、このような場合のうち、一定の要件を満たしたものについて、救済する手段を与えています。

一つは、不正競争防止法2条1項1号(周知表示誤認混同行為)です。もう一つは、不正競争防止法2条1項3号(商品形態模倣行為)です。

禁止される行為-商品形態模倣行為

不正競争防止法2条1項3号(商品形態模倣行為)は、他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡する行為などを禁止しています。そこで、オリジナル商品の権利者は、他人の行為を差し止めたり、損害賠償を請求したりすることができます。ただ、最初に販売されてから3年経つと、この手段は使えなくなります。

禁止される行為-周知表示誤認混同行為

不正競争防止法2条1項1号(周知表示誤認混同行為)は、商品の形態がその商品の出所を示すまでに周知となったという場合に、それを真似している他人の譲渡行為その他の行為を差し止めたり、損害賠償を請求したりすることができます。

最近、話題になった例-無印良品のユニットシェルフ事件

最近、話題になった例として、無印良品のユニットシェルフをカインズが真似したとして争われたケースがあります(東京地裁平成29年8月31日判決)。

結論

裁判所は、原告である無印良品を経営する良品計画の主張を認め、差し止め請求を認容しました。

コメントと実務上の留意点

上記の裁判で、判決は、無印良品のユニットシェルフの形態を周知の商品表示と認めています。しかし、全ての商品形態が商品表示と認められるわけではありません。判決は、次のように述べています。

「商品において、形態は必ずしも商品の出所を表示する目的で選択されるものではない。もっとも、商品の形態が客観的に明らかに他の同種の商品と識別し得る顕著な特徴を有し、かつ、その形態が特定の事業者により長期間独占的に使用されるなどした結果、需要者においてその形態が特定の事業者の出所を表示するものとして周知されるに至れば、商品の当該形態自体が「商品等表示」(不正競争防止法2条1項1号)になり得るといえる」。

無印良品のユニットシェルフは、組み合わせが可能なユニット家具でした。組み立て式のユニット家具も商品表示と認めた点は、注目すべきといえます。

この事件で、被告は、他にも原告商品形態を有する商品が販売されていると主張して、原告商品形態には識別力がないと争っていました。裁判所は、販売されていた商品は、原告が識別力を獲得した後で、今では販売終了となっているから、原告商品形態がありふれたものになり、識別力を無くしたとはいえないと判断しました。逆にいえば、類似の商品を放置したままにしておくと、せっかく、周知になっても、識別力を喪失してしまう恐れがあるといえます。類似の商品には早めの対処が必要です。