短い文章や言葉でも著作物として保護されるか?その①

小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物は、著作権法上、保護される著作物として10条1項1号に例示されています。
この例にあるような、小説、脚本、論文、講演であれば、容易に著作物であると認められます。
では、短い文章や言葉であっても、著作物性は認められるのでしょうか?

短い文章や言葉といっても、いろいろな種類のものがあります。
たとえば、時候の挨拶文、短歌や俳句、標語やスローガン、ニュースなどの見出し、書籍のタイトル、学術的な定義、小説などの中にある一文などです。
短い文章や言葉について著作物性が認められるためには、それが思想または感情の創作的表現といえるものでなければなりません。
どのようなものが思想または感情の創作的表現といえるか、裁判例を取り上げてみます。

<定型文>

時候の挨拶など、定型文などのありふれた表現は、思想または感情の表現したものでもなく、個性も認められないので創作的な表現とは認められません。
ただし、定型文の枠を超えるものについては、創作的表現と認められる場合があります。

裁判例:休刊または廃刊となった雑誌の最終号に掲載された挨拶文、たとえば
「【お詫び】創刊以来、読者のみなさまのご声援をうけてまいりましたが、本誌は今月号をもって休刊いたします。 これまでのご愛読ありがとうございました。しばらくの充電期間をおき、まったく新しいかたちで再出発いたします」
という挨拶文の著作物性について、ありふれた表現で、創作性がないとして、著作物性を否定しています。
これに対して、
「あたたかいご声援をありがとう 昨今の日本経済の下でギアマガジンは、新しい編集コンセプトで再出発を余儀なくされました。 皆様のアンケートでも新しいコンセプトの商品情報誌をというご意見をたくさんいただいております。 ギアマガジンが再び店頭に並ぶことをご期待いただき、今号が最終号になります。長い間のご愛読、ありがとうございました」
という挨拶文の著作物性は、個性が反映されているとして著作物性が認められています(東京地裁平成7年12月18日判決百選第4版3事件ラストメッセージin最終号事件)。

<学術的表現>

裁判例:「MgTeがウルツ鉱型構造を有している」、「原子間距離は、2.76A、2.77Aである」などの自然科学上の法則を示した文章は、思想または感情を表現したものでもなく、個性も認められないので創作的な表現とも認められません(大阪地判昭54・9・25判タ397-152発光ダイオード論文事件)。
裁判例:「城とは人によって住居、軍事、政治目的をもって選ばれた一区画の土地と、そこに設けられた防御的構築物をいう」という城の定義が問題となった事件では、本件定義は原告の学問的見解そのものであるとし、その表現形式に創作性は認められないとして、著作物性が否定されました(東京地判平6・4・25判時1509-130城の定義事件)。
このように、上記のような学術的表現は、思想または感情の表現とはいえませんし、個性も認められないので創作的な表現とも認められません。

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